Side : T&A

6/12
前へ
/74ページ
次へ
「狩ることはあっても狩られるな、という話だった。 まぁ、俺達が狙われる確率は低いだろうがな」  掃除人は己の使命を全うする時、その身を漆黒の仕事服(リコリス)に包む。  だが学生という身分も併せ持つ龍樹と綾が仕事服(リコリス)を纏うのは最後の最後。  単純に考えれば、他の掃除人よりも仕事服(リコリス)を纏っている時間が短い分、敵に狙われる危険性も低いはずだ。  敵もまさか学生が掃除人をやっているとは思うまい。 「とっとと本部の誰かが狩り返せばいい。 ……本部にそこまで有能な人間がいた覚えはないが」  一連の思考をそう締めくくった龍樹は、校舎の屋上へ飛び降りた。  屋上に出る階段の屋上に取り残された綾は、急いで龍樹の後を追いながら口を開く。 「いるじゃん。有能な人。 実働部隊(赤色)の人じゃないけど」  その言葉に脳内リストを漁った龍樹は、次の瞬間綾が言っている人物に行きついて眉をひそめた。 「あの引き籠りの花咲ジジイがわざわざ出張ってくるとは思えない」 「花咲ジジイって…… 自分のお師匠様のこと、そんな風に言っちゃっていいわけ? だいたい黒羽(くろう)さんって『ジジイ』って歳じゃないじゃん」 「……お前、外見に騙されてるぞ」
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加