6人が本棚に入れています
本棚に追加
だが彼らは二人の前に立ち塞がった。
ザッと目の前に黒が広がる。
道を塞がれた綾と龍樹は、思わず足を止めた。
今二人がいるのは、多くの人が行き交う商店街の雑踏の中だ。
たまたま互いの通り道を塞いでしまうということはざらにある。
だが相手は明確な意志を持って二人の進路を塞いでいた。
彼らが何なのかは、空気よりもその服装で分かる。
一人一人型は違うが、二人の前に立ちはだかった五人は、全員重厚な作りの漆黒の衣服に身を包んでいた。
一人は腰に日本刀を佩いている。
他の人間も、表面上見えないだけで、どこかに必ず武器を隠し持っているはずだ。
仕事服(リコリス)に身を包んだ掃除人。
それ以外に彼らを表す言葉などありはしない。
「……何の真似だ」
凍りついた綾は、言葉を発することができない。
龍樹は自分の正面に立った男を真っ直ぐに見据えると、低い声で問い質した。
押し殺した声音は行き交う人々には聴こえなかっただろう。
だが二人を足止めした一団にははっきりと届いたようだった。
最初のコメントを投稿しよう!