はじまりの日

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「相変わらず、ひれえなー」 西村総合病院。 自宅から自転車で20分の場所にある、県内でも評判の良い病院のロビーに俺は一人立っている。友だちや家族を見舞うでもなく、受診するわけでもなく。ここで看護師として働く母親に頼まれた用事を済ませるために、学校帰りに寄ったのだった。 いつもは、父親か妹の役目だけど、今日はたまたま俺が。病院に来るのは久々で、中学の時にインフルエンザにかかって以来、3年ぶりだ。昔から健康体で風邪をひいたり、怪我をすることが少ない。だから病院に行く機会もあまりなかった。そのせいか、この場所の独特の雰囲気、ざわざわしてるロビーと静かすぎる病棟とのギャップ、医療薬品のなんとも鼻につく臭い、その他諸々、全てが嫌いだった。病院が好きという方が珍しいかもしれないけど。 会計や診察待ちの人たちが座ってる椅子の島を抜け、エレベータの列に並ぶ。 3階で動きが止まった後、1の数字が赤く光って中に誰もいなくなったところで、列が進みだす。
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