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俺は嬉しさのあまり、笑いが込み上げるのを必死で我慢して藤森を見る。
「…お前、自分にも相手にも嘘はごめんって、言ってたな。…今の俺もそうだからはっきり言ってやる。
五月の一件は別に室井を好きだったわけじゃねーよ。
俺、部長が営業にいた頃から部長のこと嫌いだったの。
あのルックスに仕事も出来て、何も持ってないものなんてないように見えたから、ただの僻(ヒガ)み。
でも俺さ、あの頃から部長が室井に気があるのに気付いちゃって、それまで簡単に手に入れられちゃったら面白くねーから。
室井に手―出したのは部長への当てつけ。
けど、…正直言って、それから室井にはほんの少し熱を上げたけど…あの二人の間に隙なんて無かったし。
すぐに冷めてった。
俺の気持ちに部長は気付いたみたいだったけど、何も言わなかったし、室井は全く気付いてねえよ。
あん時の俺は本当にサイテーだったけど、部長にも室井にも救われた。」
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