磁石

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それから、何人かのお客さんに対応しながらも、ひたすら成瀬さんのことが気になっていた。 そして、成瀬さんが来てもうすぐ1時間という頃、小西さんが正面玄関を抜けた。 成瀬さんがこっちに…エレベーターに向かってくる。 今度はさっきとは逆に、一度目が合ってしまってから、その視線を絡めたまま逸らすことが出来なかった。 私が成瀬さんを目で追うように。 成瀬さんはカウンターの前で止まり、私の正面に立った。 …何か言わなきゃ。 私はカウンターの下でスカートをギュッと握った。 「…さ、さっきは…。」 「俺、お前が素直じゃねーことなんて知ってるし。」 成瀬さんが私の言葉を遮るように言った。 いつも通りの憎たらしい顔で。 「…受付嬢がそんな顔してんじゃねーよ。」 「…そんな顔って…。」 「…バカっぽい顔。」 「はあ?何よ!?どこがバカっぽい顔なのよ!?」 「ぶは。どこがって!?また教えてやるわ。じゃあな。…その顔でいろよ。」 成瀬さんは私の沈んだ気持ちを一気に引き上げて、私がそれに気付く前に行ってしまった。 「…なるせのバーカ。」 呟いた後に、新たな来客があり、私はそのお客さんにいつも通りの笑顔を向けた。
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