844人が本棚に入れています
本棚に追加
それから、何人かのお客さんに対応しながらも、ひたすら成瀬さんのことが気になっていた。
そして、成瀬さんが来てもうすぐ1時間という頃、小西さんが正面玄関を抜けた。
成瀬さんがこっちに…エレベーターに向かってくる。
今度はさっきとは逆に、一度目が合ってしまってから、その視線を絡めたまま逸らすことが出来なかった。
私が成瀬さんを目で追うように。
成瀬さんはカウンターの前で止まり、私の正面に立った。
…何か言わなきゃ。
私はカウンターの下でスカートをギュッと握った。
「…さ、さっきは…。」
「俺、お前が素直じゃねーことなんて知ってるし。」
成瀬さんが私の言葉を遮るように言った。
いつも通りの憎たらしい顔で。
「…受付嬢がそんな顔してんじゃねーよ。」
「…そんな顔って…。」
「…バカっぽい顔。」
「はあ?何よ!?どこがバカっぽい顔なのよ!?」
「ぶは。どこがって!?また教えてやるわ。じゃあな。…その顔でいろよ。」
成瀬さんは私の沈んだ気持ちを一気に引き上げて、私がそれに気付く前に行ってしまった。
「…なるせのバーカ。」
呟いた後に、新たな来客があり、私はそのお客さんにいつも通りの笑顔を向けた。
最初のコメントを投稿しよう!