磁石

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火曜日のお昼休み。 私は時差で、30分遅れてお昼休憩に入った。 食堂に行くと、既に食べ終わり、入れ違いに出ていく社員も多かった。 いつも通りにトレイに昼食のメニューを並べた後、席を見渡す。 …どこにしよっかな…。 あ。 目にしたくないものが視界に入り、心に何かが沈んでいくのを気付かない振りして、目にしたそれとは反対方向に足を進める。 成瀬さんが左右両側を女子社員に囲まれ、彼女たちからなにやら楽しげに話しかけられていた。 向かいには誰も座っていなかったけど、それは何の救いにもならなかった。 成瀬さんから離れて、さらに成瀬さんと背中合わせになるようにイスを引いた。 …見た後では結局は同じだけれど、それでもずっと見ているよりはましだった。 周りで聞こえる女子社員の笑い声が、成瀬さんの両脇にいた彼女たちのものかもしれないと思うと、食事の味もわからなかった。 早く食べて食堂を出ようと思い、 つい、いつもより早食べになってしまっていた。 もうすぐ食べ終わるという頃、私の向かいに人が立った。
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