磁石

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そして、翌日から二泊の予定で実家に帰省した。 家には父、母、父方の祖父が同居しており、私の帰省に合わせて2つ下の妹、美波(ミナミ)も帰って来ていた。 ごく普通の一般家庭。 緩い空気が久々に心地よかった。 「てか、彼氏と別れたって聞いてたけど、全然元気そうじゃん。むしろ何かキレイになった?」 「そんなわけないよ。けど元気。そうねえ、心は前より清々(スガスガ)しい分元気かも。今、家に遊びに来たらすっごく部屋もキレイだよ。」 「ウッソ!?どうしたの?」 「あはは。どうしたんだろ?」 妹のミナミとは歳もそんなに離れていないし、ほとんど友達のようなもの。 私は全然姉らしくなんてないけど、幸いミナミはしっかり者で助かっていた。 ミナミとエアコンのきいた部屋から出ずにだらだら過ごしていた。 「もー帰ってきたと思ったら二人してそれなんだから。」 そう言いながら母は娘たちの帰省を喜んでいるに違いない。 「今日は二人が帰って来たからすき焼きよ。」 「イエーイ!!」 「ヤッター!!」 母が冷蔵庫を開けて野菜を出し始めた。 キッチンに向かい、何気なく母の横に立つ。 「何か手伝おうか?」 「え!?」 母が私を食い入るように見た。 「…何?」 「…だって…、美咲が料理?手伝う?なんて言うから。」 「…言っちゃ悪い?」 「ぜ、ぜんっぜん!!」 「で、何すればいいの?相変わらず苦手は苦手だから細かく教えてよね。」 「はいはい。じゃ、まずは野菜を洗って切るわよ。」 「はーい。」 そこに後から来たミナミも私の横から手を伸ばす。 「ホント…どうしたの?あ、25歳の危機感ってヤツ?少しは料理できないとって!?」 "25歳の危機感" そのフレーズを聞いて笑いが込み上げる。 「あはは。そう、それよ!」 「まあ、気付いてくれて良かったわ。…そんなこと言ってて、ミナミだってすぐなんだからね。」 母は嬉しそうだった。 「私は後2年あるも―ん。」 家のキッチンはそんなに広いものではない。 3人で立つキッチンはむしろ狭くて効率が悪いようにも感じたけれど、 それでも帰省して良かったと思えた楽しい時間だった。
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