磁石

34/40
842人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
リビングに戻ると上昇した体温を冷ますように、エアコンの涼しい空気が体を纏(マト)った 「…会社の人、仕事のこと?」 「…う、うん。そんなとこ。」 「受付係に?」 「…ヴ。」 「…みさ姉変えたの、その人なんだ?」 反論しようと思ってやめた。 …否定はできないから。 「お母さん、ごめん。もう終わっちゃった?じゃ、お茶入れるね。冷たいお茶いる人ー!?」 「はーい。」 「はーい。」 みんなに気遣うフリをして、 本当は 成瀬さんとの電話の後で 私が一番、喉が渇いていた。 翌日は午前中までのんびりして、お昼を食べてから実家を出た。 ミナミはもう一日泊まるらしい。 電車に揺られていると、最初は実家の余韻に浸っていたはずなのに、 駅に着く頃には明日の約束のことで頭がいっぱいだった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!