磁石

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そしてその夜、 成瀬さんからの電話が鳴る。 待ち合わせを決める電話。 携帯がいつ鳴るのかと一日中、そわそわしていた。 その気持ちが成瀬さんには見えないように、わざと"私らしく"声に出す。 「もしもーし。」 『ああ、俺。帰って来てんのか?』 「うん。今はアパート。明日はどこに行けばいいの?」 『XXの駅に7時頃か。まあ、適当にその辺の電車で来いよ。』 「オッケー!成瀬さんの奢(オゴ)りでしょ?私、夏祭りで奢ったし。」 『…まあ、しょうがねーな。その代わり、次はお前な。』 「…え、あ、うん。まあ、いいけどさ。」 『じゃ、明日な。』 「うん。じゃあね。」 『おやすみ。』 「うん。おやすみ。」 短い電話のはずなのに、 私の顔は緊張で少しだけ硬い。 成瀬さんとは会って話すよりも、電話の方が緊張してしまうのはどうしてなんだろう? 電話が終わってホッとしていた。 緊張を解いて、ベッドに寝転ぶ。 "…次はお前な。" 成瀬さんは 私に 次の約束をほのめかしていた。
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