841人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
成瀬さんは半分以上グラスに残ったビールをその目で確認しながらもこう言ってくれた。
「…俺、酔ってんのかな。」
それが成瀬さんの優しさだってことは私だってちゃんとわかるよ。
優しくされたら
私だって優しくなれる。
「…私も…今日は楽しく酔えそう。ね、もう食べれるよね?食べよ!」
「ああ、こっち焦げてきた。早く食べよーぜ。」
少し焦げたお肉は最高に美味しかった。
その後も私たちの話は尽きることなく、
たまにお肉を焦がしながら
その責任をなすりつけ合いながら
楽しい時間を過ごした。
「…料理の最初はカレーだよな。カレー。まずはカレー作れるようになれよ。俺好きだし。」
「成瀬さんて辛いの大丈夫なの?」
「俺、辛いの好き。お前は?」
「私も辛いの好き!!じゃあ、辛口だね!…あ!!でもゆいは辛いのダメだった!」
「なんで室井が出てくんだよ?」
「なんか、カレーって大勢で食べるイメージじゃない?思いっきり4人で食べる設定だった。」
「はあ?お前は料理初心者で、部長は室井の料理を食べてるから舌が肥えてるし、…室井は辛いの苦手なんだろ?…まずは俺に作れよ。」
…え。
着ているTシャツが揺れるくらい、その中で私の心臓は激しく打っていた。
「…成瀬さん…味見してくれるの?」
「…バーカ。味見じゃねーよ。毒見だよ。毒見。」
「はあーー!?失礼ねー!!わかった。毒、入れるわ。即効性の毒をね!!あーー楽しみ!!成瀬さん、今の内に人生楽しんどいてよね!」
「こえーな。料理には愛情だろ?あ・い・じょ・う。これだから料理出来ねーやつは困るわ。」
「むっかつく!!最後のレバーもーらった!!」
私は箸で網に乗っていた最後のいい焼き加減のレバーを取った。
「おい!俺が丁寧に焼いてた最後の一つを!!吐き出せ!」
「バッカじゃないの?子供。」
「子供に子供って言われたかねーわ!」
「あはは。おもしろーい!」
「おもしろくねーよ!」
今日。
私の体温は
お酒と鉄板の熱と
お店の熱気。
そして、
成瀬さんへの想いで
ずっと上がりっぱなしだった。
最初のコメントを投稿しよう!