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翌日の土曜日。
会社内の噂から遮断され、部長と二人きりの空間を待ち望んでいたゆいにとって、普段の何倍も楽しみにしていただろう休日。
それがとんでもない一日になってしまったことを後から聞いた。
早くから部長のマンションで家事を済ませたゆいが首を長くして待っていた部長は
あろうことか彼女の甘い匂いを纏(マト)わせて帰宅した。
それが単なる偶然で、どうしようもない理由だったとしても、それはゆいには関係ない。
そしてその夜、眠れなかったゆいが飲めないお酒をあおりながら目にしたものは
彼女からの偽りの手紙。
ゆいはマンションを飛び出した。
…ゆいがお酒を飲むなんて。
…ゆいが夜中、部屋着のままマンションを飛び出すなんて
普通なら…
あり得なかった。
信じられないことだった。
これは後からゆいと成瀬さんから聞いた話。
…成瀬さん…。
彼は、渦(ウズ)に埋れて溺れそうになるゆいと部長、二人の…
…まさに救世主だった。
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