救世主

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アパートに着くまで部長の手はきつく拳(コブシ)を握り、時折、自分の膝を強く打ちつけた。 部長の焦りと苛立ちが、嫌でも俺に伝わった。 アパートに着いた途端、部長は車を飛び出した。 ドアの前でしばらく立っていた部長がドアが開くと同時に中に滑り込んだ。 部長の姿が見えなくなってから、俺は髪を掻きむしり、頭を抱えて何かにすがるように祈っていた。 …頼む…。 …何でもない顔で戻ってくれ…。 車に残された俺は落ち着きなく部長と…室井を待った。 しばらくして戻って来た二人の表情は悲しげで、 儚げで… でもどこか…安堵していた。 俺は二人が乗り込んだのを確認すると、黙ってアクセルを踏んだ。 静かな車内には、室井のすすり泣く声と、部長の咳がだけが聞こえていた。
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