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『…もしもし?こんな早くにどうしたの?』
少しまどろんだ声が愛しく思えた。
迷惑だろうとは思ったが、俺は夜中に起こったこの出来事を藤森に話して聞かせた。
最初はド派手に驚いて、越石のこともメッタ斬りにしていた藤森が急に黙り込む。
『…でも、人を好きになる気持ちはどうしようもないもんね…。越石君はそれを想う相手には繋げられなかったけど…彼にもいつか、いい人が見つかるといいね…。』
藤森が言うと、全く嫌味がない。
越石を責めていただけの自分が馬鹿らしくなる。
「…ああ、そうだな。」
俺も素直にそう思えた。
「…なあ。藤森…。あの二人の関係は…どこまで深いんだろうな?」
藤森は少しの間を置いて答えた。
『…どこまでも深いんだよ。…見えないくらい。見えないくらい…深いんだよ。』
それからしばらく話しをして、電話を切る間際に藤森が言った。
『…成瀬さん、ゆいのために…ゆいと部長のためにありがとう』
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