序曲~朱獄ノ世界ト白キ少女~

2/9
1080人が本棚に入れています
本棚に追加
/163ページ
そこはおよそ考える得る限り、赤い世界。 赤く、紅く、朱く、そして、どこまでも真紅の色をしていた。 その中を、ある一人の少女が、静かに歩いていた。 その少女もこう思っていた。この世界は、一体どこまで続くのかと。終わりはあるのかと。 この世界は、今更だがどこかおかしい。地面は赤インクを吸ったかのように赤黒く、少し湿っている。木々は赤茶色く、腐り切ってしまっている。岩や砂地があるだけましだが、それもみな、協調して赤黒い。まるで、全てが血を吸ったかのような、不気味な紅。 だが、そんなことよりも、ずっとおかしな点があった。 それは、目に見えて生きている者は、彼女一人しかいない、ということであった。 いや、実は動いている物すら、彼女しかないのかもしれない(まあ、ある意味当然のことではあるが)。
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!