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夢を見ていた。
夢の中で子どもの俺は、家に背を向けてもと来た道を引き返そうとしていた。もう陽は落ちかけていたけど、まだ全然遊び足りなくて、家に帰りたくなかったのだ。そんな俺の背中に向かって、ばーさんが鋭い声で俺の名を呼んだ。
「七尾、ごはんだよ! もうたっぷり遊んだでしょ!」
ばーさんにはお見通し。なんだか全部ばれてるな、かなわないなあと、すごすご家に入ると、食事の準備で家族や友達がごった返していた。
Jが鍋を仕切っていて、開堂が皿を配っていた。そんな中ルーシィはテーブルに腰掛けて、ペティギュアをしている行儀の悪さ。ばーさんにみつかると絶対怒られると思い、俺は気が気ではない。それなのにばーさんはルーシィをちっとも叱らない。
子どもの洋祐が「こっちこっち」と言って、テーブルクロスの下から顔を出す。二人でテーブルの下をくぐって反対側から顔を出し、ゲラゲラ笑った。今日はたぶん行儀が悪くていい日。続々と人が集まってくる。みんな笑っている。いちごと生クリームの丸いケーキ。これから誰かの誕生日パーティーが始まる。
そんな夢を見ていたものだから、おそらく俺の顔はニヤついていたに違いない。いい気持ちで、何の屈託もなく、まどろみと覚醒の間をゆらゆらしていた。だからか、ベッドに体重が乗って、誰かが自分をのぞきこんでいる気配を寝ぼけながらも感じた時、何も考えずに相手を引き寄せてしまった。
固い身体だった。
そいつが驚いて身体を強張らせるのもお構いなしに、そのまま頭を抱いて口づけた。弾力のある唇を舐めてやると、ためらいがちにそこは開き、ぬるぬると滑らかな舌が、俺の口腔に潜り込んでくる。舌と舌が触れあって離れて、というのを何度か繰り返しているうちに、相手にとっつかまる。キツく吸われる。
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