3/10
前へ
/215ページ
次へ
「なれてるよー。優希が来るかと思ってあけといたんだよー」 …っていうのは、もちろん、鍵閉め忘れてた言い訳だけど。 でも、優希は、本当に来たんだし…。 「だいたい、こっち出てきて私のが長いんだから、なれてるよ、いい加減」 そう、田舎から最初にこっちに出てきたのは私。 まぁ、出てきたと言っても、実家のある田舎からここまでは、車なら1時間半くらいの県内だけど。 短大を出て、就職して。 会社までは、電車乗り換えて、バス。 片道2時間かかった。 往復4時間、到底耐えられなかった。 4月に就職して、5月のゴールデンウィークに引っ越してきた。 それから、2年。 大学を出て就職した優希が、ちょうどその前年年末に引っ越していったお隣に引っ越してきた。 15歳夏、恋人になって。 20歳初夏には、少しだけ距離が離れて。 22歳春、お隣になって。 それから、7年がたつ。 29歳、夏。 私も優希も、今年、30になる。
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!

88人が本棚に入れています
本棚に追加