第1章

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初夏から秋にかけて神崎伸也のスクープはあれから聞かなくなった。 『神崎伸也、最近聞かないねぇ』 『タレントじゃ人気あってもあれだけスクープ出してちゃみんな飽きるだろ』 そんな話が社内でも言われ始めた頃私はある情報を得た。 秋も深まった頃、ある情報が本当だった事を私は見る事になる。 深夜、普段通らない公園を横切ってた時にジョギングをする神崎伸也がいた。 多少あの時の後ろめたさもあったせいか、私は嬉しくなった。 《神崎伸也、意外!深夜のジョギング!》 テレビの報道番組に少し恥ずかしそうに、ハミカミながらテレビ局へ入る姿が映し出された。 週刊誌でも久々に大きく載っていた。 『違う意味でのスクープ記事だな、神崎伸也っていうと女のイメージが取れなかったけど』 『女優や売れないアイドル相手にスクープされる事に飽きたんじゃないですか?』 そう言いつつ私は嬉しさを隠せなかった。 ある深夜、公園近くのコンビニで私は神崎伸也と遭遇した。 『ジョギング?』 知っていて聞く私に、はにかんで頷く神崎さん。 『あの時はごめんなさい』『本当の事だと実感したから、もうそういう事は止めたんで』 『しばらくあの場所に張り込む事もなくなったけど、元気でやってるなら安心した』 『あの時、言ってもらって感謝してます』 『別れたんだ?』 『もともと深い関係でもなかったから、サッパリと』『そのうち良い彼女が出来るって』 『友達になってくれませんか?』 『はっ!?』 その声に、まわりのお客がこっちを見る。 一度あきらめた片想いの気持ちは、あの頃のようにフレッシュではないけど…少しだけ心が揺らいだ。 … …… ……… あれから半年、神崎さんはジョギングや筋トレに目覚め日夜タレントもしながらスポーツジムにも通うくらいになっていた。 華奢な神崎伸也はもうなく、筋トレでムキムキの体型に変化していた。
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