第1章

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別の日、あの女優とのショットを撮りたいが為に私は陽も暮れた頃に神崎さんが住むマンションの周りに身をひそめていた。 前はあんなにすぐに撮れたのになかなか神崎さんは出てこない。または、帰らない。 Tシャツに綿のチェックシャツでも少し寒く感じる4月の中頃…もう0時をまわってる。 『大丈夫かよ』『大丈夫大丈夫』っていう会話を昼間同僚としたけど…朝がたまで帰らないんじゃないかと不安になる。 こうして待っていても空振りかもしれない。 3時…他の張り込みだと今頃アパートに帰ってる時間だ。まだ帰ってこない。 近くのコンビニにトイレを借りて、パンを買い戻ってくると…人影がちらついていた。 『何するの!』 私のカメラを見て悪さをしようとしている人影。 走って手を伸ばしたその手は宙を舞う、空振りだ。 『人の物勝手に触って良いんですか!』 えっ!?神崎伸也? 暗い中2人の影がもつれあう。『バカみてぇ!』そう捨てセリフを言いカメラを持ち振り上げ…地面に叩きつけようとしている人影。 カメラが! …… 人影は走り去り、神崎さんは私にカメラを渡してくれた。 『商売道具だから守りました。記者なんですよね?そこにこの間記事になった女優がいるからツーショット撮りますか?』 はっ?何を? 女優を手招きしながら神崎さんはさらに続ける。 『売れないアイドルだったから一回失敗してるんで、食べてく為ならスクープ写真撮られまくってネタにして、テレビに出るしかないからね』 私はハッとした! 『撮れないです』 今度は神崎さんが、はっ?っていう顔をした。 首をかしげ女優とマンションに入っていく後ろ姿を見ながら私は神崎伸也のスクープのみ阻止する事を決めた。 変な誓いである。
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