第1章

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とある夕方… 『神崎伸也のスクープ出そうなんで行ってきま~す』って会社を出る後ろ姿を追って、息も絶え絶えに車に乗り込む。 『森部、他にやる事あるだろ~』 『良いから、良いから』 先輩や同僚と同行すると車だから楽で良い。 『森部、車の免許取れよ』『そうだよね~』 電車・自転車移動でやってきたけど、そうだよね~。 深夜…神崎さんがまた別の女優と腕を組んで歩いてくる。同僚はカメラに手をかけスタンバイすると同時に、私は同僚に見つからないように手をクロスさせバツを作って前に出る。 引き返して! けど私の思いとは逆にカメラの前をドヤ顔で女優共々通り過ぎてマンションに入ってく。 『撮って下さいとばかりのドヤ顔かよ』 『あ~ぁ』 『森部どした?』 私は大きくため息をつき座りこんだ。 《神崎伸也、あれから1週間!また別の女優と深夜帰宅》 週刊誌に載りテレビの報道番組では、『やぁどうもどうも』と笑ってインタビューに答えている神崎さん。たしかに本来のバラエティーと同じくらい報道番組に出ている。 私は記者なのに神崎伸也のみスクープ阻止したいだなんて、記者失格かも。 カメラを壊されそうになったあの時に、カメラを守ってくれた瞬間から私は神崎さんを撮れなくなった。 記者として落ちこぼれか!
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