第1章

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別の日の深夜3時を過ぎたあたり…神崎さんが売れないアイドルを連れて歩いてくる。 私はスケッチブックにバツマークを書き、同僚に見つからないよう…歩いてくる神崎さんに示した。 引き返して! 何それ?っていう顔をし、またドヤ顔で一瞬止まりシャッターをきられる。 何て奴! 何て奴なんだ~あっ! 私は何でこんな男に6年片想いしてるのか…トホホな私。 大きくため息を付き座る私に、同僚は『変な奴』と首をかしげた。 《話題豊富な神崎伸也!撮られたいのか?》 撮られたいんだろっ! テレビの報道番組で笑いながら記者に愛想をふりまいている。売れないアイドルの方は『3年前に発売されたシングルよろしく~』って笑う。 テレビにうつる為には何でも良いのか?こいつらは! …◇…◇…◇…◇… ある時、先輩が私のスケッチブックに気がついた。 『神崎伸也の張り込みにだけ持ってきてるけど何?』『あっ、暇潰しに絵でも書こうかと』 『書いてないくせに変な奴』 神崎伸也用の引き返せのバツマークのカンペだとは言いだせない。 カンペはカンペだけど《記者が来てますよ》の目印になっているとは私は知るよしもなく、神崎伸也はまたドヤ顔でピースサインをし女優とマンションに入っていく。 《神崎伸也、またまた女優と!》 週刊誌また載る事になる。 いい加減、片想いやめようか。 …◇…◇…◇…◇… とある深夜…今日は1人でね張り込みだったからスケッチブックを大きく振り回し、引き返せって合図した。 話すチャンスがやってきた! 『カンペ出してるでしょ』『関係ないし、むしろ逆に暗闇の茂みに隠れてもカンペでわかるんで→わざと撮られにいってます。あっ、一瞬立ち止まりましょうか?』 『はぁぁ~』 『撮らないんですか?カメラ持ってるのに?』 『撮らないよ!』 首をかしげつつ売れないアイドルとマンションに入っていく。 このやろう! こいつらはテレビにうつる為に手段を選ばないのか! いい加減飽きてきた、片想い! …◇…◇…◇…◇… 『森部、神崎伸也の張り込みに行ったのに空振り?』『空振りですっ』 同僚は『神崎伸也にしては珍し~』とデスクに戻っていった。 珍しくない!呆れる程に撮られたい願望丸出しだったよ! 変なのは私の方! 諦めようか、片想い。
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