第1章 衝撃的告白

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「あの桜の花びらのキーホルダーを持っていたから、わしらはお前を『さくら』と名づけたんじゃ。あのキーホルダーとポケットアルバムの二つは、お前の実の両親がお前に与えたものじゃろう。あの二つは、お前が施設に引き取られたときには、すでにお前のものになっていたらしいんじゃよ。お前に教えてやれる情報は、このぐらいだな……。お前の言う通り、施設の人も、たとえお前が当事者とはいえ、そうやすやすと個人の情報を口外しないじゃろう。これからどうして探すんじゃ? ネットを使うのか?」 「ううん、ネットは使わない。私としても、そんなに大っぴらにしたい事実じゃないから。おじいちゃんや亡くなったお父さんお母さんに対しても、失礼でしょ」 「わしのことは、気にしなくてもいいが……」 「それでもやっぱりやめておくよ。不特定多数の人に出自のことを知られるのは、嫌な面もあるし。それにそうした場合、面白半分で私たちのことを攻撃するような人も現れるかもしれないから」 「なるほど。それもそうじゃな。それじゃ、キーホルダーとポケットアルバムだけが手がかりか……」 「うん。いったん帰ってもいい? その二つをしっかりと確認したいから」 「ああ、もちろんじゃ。面倒だったら今日はもう来なくてもいいし、そちらの都合を最優先でいいぞ。わしは動けない訳じゃないから、欲しいものがあれば自分で調達できるし、さくらの都合でいいからな。何かあればすぐ連絡する」 「そうは言うけど、心配だからまた今日ももう一回来るよ。それに、キーホルダーとポケットアルバムについて、一緒に考えたいから。ダメ?」 「もちろん来てくれるほうが、ありがたいに決まってるじゃろ」  ここで久々に、おじいちゃんの明るい笑顔が見られた。  少し安心する私。 「それじゃ、ちょっと家に戻って、キーホルダーとアルバムを持ってくるね」 「ああ、気をつけてな。おお、そうじゃ! 小さな将棋盤と将棋駒を、ついでに取ってきてくれんか?」 「うん、分かった。おじいちゃんの部屋にあるのよね?」 「うん、そうじゃ。よろしく頼んだよ。気をつけて帰るんじゃぞ」  こうして、私は大切な手がかりである、キーホルダーとポケットアルバムを探しに、いったん家に引き返した。
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