第4章 深まる恋、そして謎

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 神社では、お参りのあと、絵馬を書いたり、おみくじを引いたりした。  出店の並ぶ通りと同じく、すごい人混みだ。  隣に涼君がいるということで、「おじいちゃんが早く退院できますように」と「早く生みの両親が見つかりますように」ということだけしか、言ったり書いたりできなかったけど、本当は涼君への片思いのこともお願いしたかった。  今度、一人でまた来ようっと。  おみくじは、二人とも「吉」という、かなり良い結果だった。  確か、「大吉、吉、中吉、小吉、末吉、凶」の順だったはず。  大吉はそんなに簡単に出ないか……。  私のは「久しく深い悩みもやがて雲散霧消し、春の桜のごとく次第に喜びが広がるだろう」と書かれていた。  春の桜……悩みもやがて消える……何だか私にぴったりの内容だ!  いい感じ!  そのあと、神社を後にした私たちは、ゆっくりと出店を見て回ることにした。  まず目にとまった金魚すくいは、「しっかり育てられるか分からないし、金魚がかわいそう」ということで素通りする。  そのあと、射的のお店があって、涼君が「これやってみる」と言って立ち止まる。  模型銃を握ると、片目を閉じて狙いをつける涼君。  かっこいい!  三発目で、鹿のぬいぐるみをゲットした涼君は、それを私にくれた。  かっこよすぎる。  私は喜びのあまり、何度も何度もお礼を言った。  でも涼君は「二発外した……俺もまだまだだ」と悔しがっている。 「でも、スパイナーみたいで、かっこよかったよ!」  私は思ったまま口にしたんだけど、きょとんとする涼君。 「ああ、スナイパーだね」  な、何というミスを……。  ああっ、このままでは頭のかわいそうな子に思われてしまう! 「でも、銃を構えるあの様子、スパイっぽいから、間違えやすいよね」  涼君の優しいフォローが、心に染みる。  とほほ……。  草履忘れ事件もそうだけど、ますます私の評価が下がったよ、きっと……。  早々に挽回しないと。
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