第4章 深まる恋、そして謎

37/43
前へ
/243ページ
次へ
「あの……その……」  ううう……言いづらい。 「ん? どうしたの?」 「えっと、あそこに、お写真があるよね」  私は、机の上を指差す。 「ああ、スイと一緒に撮ったやつだね」  スイちゃんって言うのか……。 「勝手に見ちゃってごめんね」 「いやいや、別に見るくらい、いくらでもいいよ」  涼君はそう言うと立ち上がって机まで歩いていき、写真を手に取る。  そして、「もっと近くで見てもいいよ」と言いながら、それを私のもとまで持ってきてくれた。  涼君、堂々としてる……。  これって全然、「元カノと一緒の写真」を持ってくる態度じゃないよ……。  完全にこれは、今も交際中なんじゃないかな……。 「さくらちゃんにも、早く会わせたいな。もうすぐ帰ってくるかもって言ってたから、きっと近いうちに会えると思うよ」  うぅ~。  心にズキーンと来る……。  涼君は私の気持ちを知らないから、仕方ないよね。  全く知らないんだし。 「この子が、えっと……スイさん?」 「うん。ああ、さくらちゃんより年下だし、『さん付け』しなくてもいいよ」  年下の彼女さんなんだ……。  私は半ば、放心状態になりつつあった。  恋が……終わっちゃった……。 「ね? 可愛いでしょ? でも兄妹なのに、俺とはあまり似てないってよく言われてるよ。さくらちゃんは、どう思う?」  ええええ!  妹さんだったのね!  彼女さんじゃなかった! 「涼君、妹さんがいたんだね!」 「あれ? 誰からも聞いてなかったっけ」  涼君は、きょとんとしている。  何だか、勝手に悩んで、涙まで流して……自分が恥ずかしい。  なんで思い込んじゃったんだろ……。  それと同時に、安心して涙が出そうになるのを、辛うじてこらえた。 「さくらちゃんの部屋の隣、あそこの部屋のドアに『翠』って書いてあるでしょ。あの部屋がスイの部屋だよ」 「ああ! スイちゃんって、あの字を書くんだ」 「ミドリだと思った?」  涼君は、面白そうに笑っている。 「まぁ、普通はそう読むよね。普通はね。でも、うちの母さん、普通じゃないでしょ。父さんいわく、母さんが名づけたそうだから」 「ぷっ」  美優さんには申し訳ないけど、私もふきだしてしまった。 「母さんには内緒だよ。しーっ」 「はぁい」  もっと早く聞けばよかった。  でも安心した………ほんと、よかったよ~。
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加