第4章 深まる恋、そして謎

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 リビングには、美優さんがいた。  テレビを見ながら、くつろぎ中のようだ。  他のみんなは、それぞれの部屋に戻っているとのことだった。  私たちはさっそく、一髪屋さんのことを聞いてみる。 「ええ~~! 二人とも知らないの? ジェネレーションギャップ!」  美優さんが大げさに驚く。 「母さんは知ってるの?」 「モチのロンよ」  な、なんか古めかしい表現だ……。 「大ヒット曲『ふられた今宵に、わななき夜桜』で一世を風靡したアイドル歌手だよ」  な、なんかすごい曲名……。 「なんちゅう曲名だ」  同じことを思ったのか、涼君が言う。 「他の曲で、有名なのって何かな?」  私が聞いた。 「うーん、私は他に知らないなぁ。でも『わななき』だけは、年間売り上げでトップテンに入り、たしかミリオンも達成していたはず」 「うわぁ、そこまでの大ヒットはすごいね」  私は感心した。  じゃあ、かなりの有名人ってことじゃないのかな。  うなずきながら涼君が、続けて美優さんに聞いた。 「そうだよね。ってか、どうして最近はテレビに出てないのかな、その一髪屋さん。母さんは最近、テレビで一髪屋さんを見た?」 「最後にテレビでその人を見たのは、もう七年ぐらい前かな。『あの歌手は、今でもこんなにスゴイ』だったっけ。そんな感じの番組で、歌ってるのを見たよ。ルックスがアイドル時代とは別人で、びっくりだったけど、歌唱力はそんなに変わってなかったよ。それ以前となると……『わななき』が売れた時から二年間ほどはよく見たけど、それ以外の時期にテレビでは見た覚えがほとんどないなぁ」  美優さんは、遠い目をしている。 「で、で、どうして急にその人のことを知りたくなったの?」  元気な調子がすぐ復活する美優さん。  私たちは、事情を説明した。
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