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「『に』が入りますよね。『ふられた今宵に、わななき夜桜』ですね」
涼君が言う。
「おう、モウリョウイン君は、よう知ってるやないか。さくらは俺の娘やねんし、もっと知っといてくれんと困るやん」
「は、はい、すみませんでした。でも、こちらの彼は、正しくは『清涼院君』です」
素直に謝っておこう……。
「魑魅魍魎(ちみもうりょう)みたく言わないでください」
涼君が笑いながら、名前のところに突っ込んだ。
「ぎゃはははは、すまんすまん。それは置いといて、俺を『わななき夜桜』だけの歌手やと思っとるんちゃうか? もっといっぱい歌ってるで。『夏の夢、チクワと鉄アレイ』とかな」
す、すごいセンスだ……。
これって全部、一髪屋さんの作詞なのかな。
どんな曲か聴いてみたくなってくるかも。
こんなへんてこな曲名だと。
「その顔は、さては知らんかったか。ほな、これからカラオケ行こか。生歌で聴いてみい! 二時間ぶっ通しで聴かせてやろうやないか!」
「いえ、ちょっとこのあと、別の用事がありますので……」
涼君が、すぐに断ってくれた。
もし私が一人で来てたなら、恐らく断ることができずに、カラオケに行ってたかも。
聴いてみたい気もするけど、二時間はきつすぎる。
涼君がいてくれてよかったよ……。
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