第5章 大阪編

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「そうかぁ、そら残念やわ。ライブやとツェーマン払わんと聴けへん、俺の生歌をタダで聴けるチャンスやったのになぁ」  いつか見たテレビ番組で知ったんだけど、ツェーマンとは「一万円」のことらしかった。  どのぐらいお客さんが入るのかは知らないけど、この様子だと今でもお金持ちなのかな。 「まぁ、ええわ。そやんな、『わななき夜桜』の印象が強いんも分かるで。何せ、あんたの名前と、このキーホルダーから発想した曲やしな。あんたがこの曲に運命感じて、他の曲は耳に入らへん言うのも、ごっつ頷(うなず)けるわ」  別に、「運命を感じた」とか、一言も言ってないんだけどね。  でも、私の名前と、さくらの花びらの押し花キーホルダーから、その曲が出来たという話は、私にはたしかに印象的だった。  そのあたりのことを、詳しく聞いてみることにする。 「私の名前とキーホルダーが、その曲名の由来なんですね?」 「お、やっぱ気になるわな。よし、話したる。俺の栄光の軌跡のうち、あんたに関係ありそうなとこをな。えっとなぁ、あんたのお母ちゃんは、胡桃っていう名前なんやけどな」 「ええっ?!」  まただ!  八重桜さん、本間さんに続き、この人も胡桃さんを私の母親だと断言している。  この部分は事実なんじゃないかな……そんな気がしてきた。  これだけ多くの人が、口をそろえて言っていることだから……。  それに、写真によっては、胡桃さんは私に似ていると思うこともあるし……。
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