第5章 大阪編

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 そこで、しばらく黙っていた涼君が口を開いた。 「それじゃ、来週の火曜に鑑定しにいきましょう。場所は調べてから、追って連絡します。きっと大阪にも、そういう鑑定をしてくれる会社があるはずですし」 「おう、モウリョウインの兄ちゃん、気ぃ利くな!」 「いえいえ、どういたしまして。名前は清涼院ですが」  今度はクールに訂正する涼君。  涼君は、一髪屋さんのこの調子に、疲れてないのかな。  私はほとほと疲れ果てていたので、早く帰りたい気持ちに突き動かされて、言った。 「それじゃ、またその日に。今日はお忙しいところを、ありがとうございました」 「おう、こっちこそおおきにな! ああ、言うまでもあらへんけど、あんたら学生さんやろし、DHA鑑定団にかかる費用は、俺が全部出すさかい、安心しといてや」 「ありがとうございます」  これは、本当にありがたかった。  もう疲れきっていたので、「DHA」と「鑑定団」のところはスルーしておく。 「ええねんええねん。親子なら、当然のことやで。その日には間違いなく、俺とあんたが親子ってことが、あんたにもはっきり分かってもらえるわけやし、楽しみやわぁ。まぁ、そんなことで、また火曜にな。ほな、さいなら」  立ち上がりながら、一髪屋さんが言う。 「今日はありがとうございました」  涼君と私は立ち上がると、声をそろえてそう言って、軽くお辞儀をした。  一髪屋さんは、背を向けて颯爽と歩き去りながら、右手を挙げて振っている。  そしてあっという間に、公園の出口へ消えてしまった。
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