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「行っちゃったね」
一髪屋さんの姿が見えなくなると、私はつぶやいた。
「何だか、不思議な人だったね~」
涼君が言う。
確かに不思議すぎ。
でも、それよりもむしろ……。
「私、あの人、苦手かも~。馬が合わないというか、気が合わないというか。正直、あの人が父親だったら、嫌だなぁ。一緒にいるだけで、疲れる感じだよ」
つい、本音が出てしまった。
「実は、俺も得意じゃないかな」
頭をかきながら涼君が言う。
なんだ、私だけじゃなかったんだ。
よかった。
何が「よかった」なのかは、自分でもよく分からないけど。
「まぁ、でも、DNA鑑定の費用を全額負担してくれるのは、すごくありがたいから、悪い人ではないんだと思うよ。ただ、ほんのちょっと、とっつきにくいというか、人を寄せ付けないオーラがあるというか、そういう人だったよね」
涼君の意見に、激しく同意だった。
その表現はかなり、オブラートに包まれている感はあるけど。
私はストレートに「馬が合わない、気が合わない」って言っちゃったな。
「たしかに、それはそうだね。悪い人ではないのかも、うん」
仮にも、父親である可能性が出てきた人なので、私はそう思いたかった。
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