第6章 進む調査、深まる想い

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「あ、すみません。初めまして、さくらと申します」 「初めまして、清涼院と申します」 「これはこれはご丁寧に。初めまして、土佐といいます。花ヶ池さんにはいつも将棋を教えてもらってまして、仲良くしてもらってますよ」  土佐さんは、深々と頭を下げた。  礼儀正しい人だなぁ。 「さくらと涼君は、これから何か予定はあるのか? なければ、プールにでも行ってみてはどうか? 二人とも若いんじゃから、外で元気にハッスルしまくって、思い出作りせんと」 「プールですか、いいですね!」  涼君が言った。 「うん、私も行きたいな」 「それじゃ、わしらは将棋といきますか。わしは検査結果次第で、もうすぐ退院ということになりますし、病室でこうして土佐さんと毎日指せるのは、あと何日かの話ですからなぁ。退院してからも、検査の日には、たまに立ち寄らせてもらいますけどね」  ちょっとだけ寂しげに笑うおじいちゃん。 「いやいや、わしもあと一ヶ月ほどで退院できますので、そのときはお互いの家かネットで指しましょう」  土佐さんも笑顔で言った。  そう言えば、おじいちゃんはもう六十近い年齢だけど、ネットを使うこともある。  以前から家で何度もそういう話を聞いているし、実際におじいちゃんがネットを使っているところを見たこともあった。  今は入院中なので、パソコンを持ち込んでおらず、使えないみたいだけど。  普段はネットで将棋を指すことも珍しくないって、この前言ってたっけ。 「それじゃ、私たちはそろそろ行くね」  おじいちゃんたちは将棋を指したそうなので、私は言った。 「それでは、また。ヒサさん、俺にもいつか将棋を教えてくださいよ」  私たちが口々に挨拶すると、おじいちゃんも笑顔で言った。 「おう、気をつけてな! 涼君、退院したら、わしの部屋に通うように。みっちり将棋を教えるぞ!」 「お二人とも、お気をつけて」  土佐さんも笑顔で言って、手を振ってくれる。  こうして、涼君と私は病室を後にした。
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