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プールは、思ってたよりも人で混みあっていた。
「ちょっと混んでるけど、土日よりはマシかな」
涼君が言う。
なるほど、土日はもっと混むのかぁ。
「それじゃ、水に入ろっか」
私はすぐ水に入ろうとしたが、涼君に止められた。
「待って。一応、準備運動してからね」
たしかに、それは大事だ。
うっかりしてたなぁ。
さすが、涼君。
私たちは準備運動をしてから、ゆっくりと水に入った。
「涼君は、泳ぎが得意なの?」
気になって聞いてみた。
「苦手ではないかな。一応これでも運動部だしね。まぁ普通ぐらいかな。さくらちゃんは?」
うう……聞くんじゃなかった。
また幻滅されちゃう……。
「全然ダメかも。十五メートルくらいしか泳げなくて。なぜか沈んじゃうし、息継ぎも出来ないんだよね……」
「そっかぁ……。それなら、プールじゃなく、別の場所へ行けばよかったね。ごめん……」
申し訳なさそうに涼君が言う。
「ううん、気にしないで。泳げないなりに楽しめると思うから」
私はそう言ったけど、正直、浮き輪が恋しかった。
友達と海やプールに行くとき、バッグに詰めるのが面倒だったり、すっかり忘れたりして、結局持っていかないことがほとんどなんだけど……実は、自分の部屋に浮き輪はある。
そして、「浮き輪を持ってくればよかったぁ」って、いつもこういうシチュエーションになってから思うんだよね……。
ここのプールは足がつく深さだし、溺れることは少ないはずだけど、浮き輪があるだけで安心感が格段に違うんだな、これが。
「それじゃ、つかまりたかったら、俺の腕につかまってね」
「え?」
「もしよかったら……でいいよ」
頬が熱くなるのを感じた。
心なしか、何だか涼君の顔もちょっと赤いみたいに見える。
うーん、私は意識しすぎなのかなぁ。
もっと自然にしていないとダメなのかなと思う。
でも、意識するなっていうのは難しいんだよね……。
とりあえず、涼君の腕につかまるなんて、想像するだけで恥ずかしいので、すぐには無理だった。
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