17人が本棚に入れています
本棚に追加
「それで、さくらちゃんは、水があまり好きじゃないってこと?」
「ううん、そういうわけじゃなくて。水に顔をつけることは何ともないんだよ。ただ、水に入ると沈むの。息継ぎのときもそうやって沈むから、一度もできなくて。それで、まともに泳げない」
私はもうすっかり開き直って、隠さずに言った。
「そっか、水が苦手ってわけではないんだね」
「うん」
次の瞬間、涼君がイタズラっぽく笑ったかと思うと、いきなり水を私にかけてきた。
不意打ちでびっくり仰天!
「ちょっと、涼君! 何するの!」
「だって、水は苦手じゃないって言うから」
涼君は面白そうに笑っている。
私も表向き抗議はするけど、ついつい笑ってしまう。
「たしかにそれはそうなんだけど……突然、水をかけられるのは誰だって嫌でしょ~」
「うん、そうかもね。でも、嫌って言いながら、さくらちゃん、今笑ってるもん。嫌じゃないんでしょ、ほら、ほら~」
言うと、また水をかけてくる涼君。
もう~。
楽しくなくもないから……別にいいけど。
「それじゃ、反撃いきまーす」
そう宣言してから、私も水をかけ返した。
「うわっ!」
手で顔をガードする涼君。
調子に乗った私は、さらにエスカレートした。
両手を大きく振りかぶると、勢いよく水面に振り下ろして、激しい水しぶきを涼君に浴びせる。
「うわっ、やめてやめて!」
言いつつ、涼君も笑っている。
もう一回しようっと。
そして、同じように大きく振りかぶった。
そのとき―――。
「あれ?!」
涼君がそこまでとは調子の全く違う、本気で驚いたような声を挙げたので、私は思わず動きを止めた。
両手を大きく振り上げたポーズのまま。
最初のコメントを投稿しよう!