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「あ、あと、ちょっとだけ確認させてね」
涼君はそう言うと、私の背後に回り、左腕に優しく手をかけた。
ドキドキする私。
「うん、傷とかついてないみたいだ。よかった」
左ひじのところを心配してくれてたんだ。
本間さんが付けたというそのアザのところに、傷が残ってないかって。
涼君は、しみじみした調子で言葉を続けた。
「俺は本間が一番嫌いだなぁ。あんな無茶苦茶するし。何せ、犯罪組織の頭目だからね。さくらちゃんがあんなヤツの娘でないことを、心底祈ってるよ。あいつと比べれば、一髪屋さんの方がずっとマシだよ。俺も、あの人と気が合うとは決して言えないけれど、少なくとも犯罪に関わりはなさそうだし、本間のような乱暴もしないしね」
涼君は、本間さんが大嫌いみたい。
たしかに、本間さんには少しやり過ぎなところがあるとは思うし、こんな風に思われちゃうのも、見方によれば自業自得、身から出たサビってことで仕方ないのかも。
「さくらちゃんのきれいな肌に傷とかついてなくて、本当によかったよ」
涼君は、まだ私の左腕に優しく手を添えてくれている。
嬉しいけど、そろそろ恥ずかしくなってきた。
周りには他の人もいるわけだし。
あと、「きれいな肌」って、さりげなく褒められたのも……。
顔がものすごく熱く感じる。
身体は水に浸かってて、顔も冷たい水で濡れているはずなのに。
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