第6章 進む調査、深まる想い

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 そのあと私たちは、そういうシリアスな話題をやめ、思う存分プールを満喫した。  しばらく水中散歩のように歩き回ったり、軽く泳いだりしていると、涼君がちらちらと遠くの方へ目をやっているのに気づいた私。  何を見てるのかな、と私も視線をそちらに向けると、ウォータースライダーがある。  もしかして、私が泳ぐのを苦手と言ってるから、ウォータースライダーで遊ぶのを遠慮してくれてるんじゃないかなと思った。  優しい涼君のことだし、きっとそうかも。  それで言ってみた。 「ウォータースライダー、行きたい?」 「え? さくらちゃんは、ああいうのは平気?」 「平気じゃないけど、涼君があっちをちらちら見てるから、『あれで遊びたいのかな』って思って。行きたかったら、私に気にせずにいってきてね。私は、もちろん見てるだけでいいから」  高所恐怖症の沙織に比べると、私は高いところも大丈夫なほうだから、多分ウォータースライダーも大丈夫だとは思うんだけど……。  何しろ今まで滑ったことがないので、そういう怖さはあったから正直に「見てるだけでいい」と言ったのだった。  もちろん、あまりにも高いところは、普通に怖いけど。  あのスライダーの高さなら、大丈夫………なはず! 「でも、俺だけ行ってくるのも申し訳ないよ。さくらちゃんが、つまんないでしょ」 「ううん、見てるだけでも楽しいと思うよ。サッカーでも将棋でも、何でもそうかも。将棋でも最近、プロ棋士の対局を見て応援するけど自分は指さないという『見る将棋ファン』という人たちも増えてきてるらしいよ。私は自分でも指せなくもないけど、どちらかというとやっぱり見ているほうが多いかな」 「うーん、そういうものかなぁ」  涼君は、懐疑的な様子だ。  なーんか、イマイチ説得しきれてない感じ。  私としては、あまり気を遣わせたくないし、涼君に楽しんできてほしいんだけどなぁ。
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