17人が本棚に入れています
本棚に追加
翌朝はおじいちゃんも私も、入院の手続きや用意で忙しく、ゆっくりと話をする時間はなかった。
それでも昼食後、病室に落ち着いたおじいちゃんと、腰を落ち着けて話をする時間がようやくできた。
「おじいちゃん、昨日の話なんだけど……」
「あぁ」
おじいちゃんは相変わらず真面目な表情だ。
昨日、あの話をしてくれてから今まで、入院の準備などのせいもあってか、普段のおじいちゃんの明るい表情は鳴りを潜めていた。
もちろん、病室に落ち着いたことで、ホッと一息ついた感じではあったけど、依然として普段の明るさまでは戻ってきていない様子だ。
「わしもいつ言うべきか、すごく悩んだんじゃ」
おじいちゃんがゆっくりと言う。
「じゃが、昨日も言ったと思うけど、いずれは言わねばならんこと。それで昨日伝えたんじゃが、さくらを傷つけることになってないかがすごく気になってたよ。すまんな」
「私は傷ついてないよ」
私はすぐに言った。
「そりゃ、びっくりはしたけど。お父さんお母さんは私を生んでくれた人ではないっていうことだけど、私にとって二人が両親っていうことに変わりはないし、おじいちゃんもまた私のおじいちゃんってことに変わりはないんだから……」
そこまで言って、私は言葉に詰まった。
おじいちゃんの目に涙が見えたからだ。
おじいちゃんが涙ぐむ姿を見るのは、私にとって今回が初めてだった。
おじいちゃん……。
「おじいちゃん、泣かないで」
「ああ、すまん」
いつものおじいちゃんなら、もしこういう場面になったとしても「目から鼻水が出ただけ」とか何とか半笑いで言いそうなところなので、それを想像すると、おじいちゃんが笑顔を見せてくれない現状が、少し寂しかった。
最初のコメントを投稿しよう!