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「それでね」
私は昨晩一人でずっと考えていたことを切り出した。
「私……生んでくれた両親にも会ってみたい」
「そう言うと思っていたよ」
おじいちゃんはうなずく。
「さっきも言った通り、お父さんお母さんおじいちゃんが、今までもこれからも私の家族だということに変わりはないし、気持ちは変わらないよ。でも…………それでも、生んでくれた両親にも、たった一度だけでいいから、会ってみたいの」
「そう思うのは自然なことじゃと、わしは思うよ。ただ、簡単なことじゃない。それは、さくらにも分かるじゃろ」
私にも分かっていた。
痛いくらいに。
私は施設に預けられていたということだし……実の両親に何らかの事情があって、私を育てられなくなったことは、まず間違いないだろう。
私がその施設に行ってみたところで、たとえ当時の記録が残っていたとしても、何一つ教えてくれないだろうということは容易に想像がつく。
守秘義務というものがあるだろうし……。
もちろん、こんなことを言い出すこと自体、お父さんお母さん、そしておじいちゃんにとって失礼にあたるかもという考えも、私の中にあった。
それでも、おじいちゃんに打ち明けた理由は、幾つかある。
一つは……おじいちゃんには何でも打ち明けやすいからだ。
また、実の両親にこれから会う方法を模索する場合に、おじいちゃんに知らせず影でこそこそするのが嫌だったと思ったから……というのも一つの理由だった。
それに……当時を知るおじいちゃんが、ひょっとしたら、ほんの些細なことであっても、実の両親の情報を知っているかもしれないと、淡い期待を持っていたというのもあるかも。
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