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「実の両親について、何か情報はない? 今さら、その施設に私が出向いても、両親の情報を私に教えてくれるとは思えないし、私としては全く手がかりのない状態だから……。ほんの些細なことでもいいから……何か知らない?」
おじいちゃんは黙ったまま、少し顔を上に向けて、目を閉じた。
思い出そうとしてくれてるようだ。
「お前の『さくら』っていう名前はな」
おじいちゃんは目を見開くと、真正面の壁を見つめて言う。
「押し花のキーホルダーはまだ持ってるか? 桜の花びらのやつじゃ。あのキーホルダーから、お前は『さくら』と名づけられたんじゃよ」
今、ここに持ってきてはいなかったけど、何のことかはすぐ分かった。
桜の花びらを押し花にして、それをキーホルダーにしたものだ。
物心がつく前から持っていたような気がする。
すごく綺麗で、私にとってお気に入りのキーホルダーだった。
「あの押し花キーホルダーは、実の両親が作ったものじゃろう。お前が預けられていた施設によると、お前をくるんでいた毛布の中に入っていたそうじゃ。毛布には他にも、生まれたばかりのお前の写真が何枚も入った小さなアルバムもくるまれていたらしい。このアルバムも、すでにお前が持っているはずじゃよ」
「薄い表紙で、ピンク色のやつ?」
「そう、それじゃ。表紙にポケットアルバムと書いてあるはずじゃ」
そのポケットアルバムというものにも心当たりがあった。
どういう経緯で渡してもらったかということに関しての記憶はないけど、自分の赤ちゃんの頃の写真ということで、大事にしているものの一つだ。
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