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客としては…
確かにそんな大金持ちと付き合いがあれば、店の方は潤うし、上手くすれば店舗を増やす為の相談窓口になってくれるかも知れない。
それはそれで、万々歳だけど、私が気にしたのは、なんで御曹司と言われたくなくて庶民の生活をこよなく好むのかと言うところ。
ならば、従業員と客としてそんな話を聞いてみたい気になる。
「あ、これ…。君に渡しとくよ…まぁ、名刺は挨拶代わりだから、ほんの気まぐれだから、深く考えなくて良いよ」
「じゃあ、一応。」
店まで送ってもらう間に、三枝さんから渡された一枚の名刺、ふと思い出して見てみると、確かにそこには彼が財閥の人間である事、会社の上役である事が克明に書かれていた。
そんな人と…
私は単なる偶然にしろ、出会ってしまったんだ…改めて意味の大きさを感じる。
「どうかしたの、千春?」
「あ、うん。何でもない…ただ、凄い人なんだって思っただけ」
「ふーん…さて、また忙しくなるよ、これからが勝負の時間。早く仕事になれないとね?」
「貴女には負けないよ?」
私は遥にそう言い返すと新たな気持ちで仕事に戻って行った。
あの頃は本当、右も左もわからなかったからねー。振り返るとあの時から、既に3ヶ月なんだ。
相変わらず、三枝さんは週に二回位のペースで店に来店している、もうすっかり常連の仲間入りを果たしてるんだけど距離が近付いてるのかは従業員と客じゃ、解らない…でも、色々聞いて、少しは彼の事情も理解してるつもり。
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