episode2 祭りの後で…

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指定されたパーティ会場は地上30階の展望ルーム、2000人位は収容出来るほどの巨大なホールで、勿論私も遥も入ったことすらない正にVIP御用達の部屋だ。 中には主催者側に招待された客がそこかしこに来ていてさながら祝杯モード。 既に用意されたお酒やらドリンクを手にして談笑している。 驚いたのは、三枝さんが入った瞬間から、恐らく取引のあるだろう業界の人間が、次々と挨拶してきて、彼自身もそれに呼応する様に挨拶を返し、時折一言二言会話しながら歩いて行く姿。 「流石御曹司ね、交友関係の広い事」 「だよねー。何か凄く不安になってきた、私」 その後ろで耳打ちする私達には何とも縁遠い方々が顔を揃えていた。 そして、肝心な彼を招待した取引先の主催者と挨拶を交わした頃、私達も嫌を無しに周りの人から話しかけられた。 「君達は坊っちゃんのご友人ですかな?」 ちょっと小太りで年配の男性。顔は知っている。彼は沢木グループの社長で、名前を沢木孝蔵(さわきこうぞう)と言って、雑誌やテレビでも見かける有名人。 「はい、そうです。三枝さんに連れられてきたんですが、初めてなもので緊張しちゃって」 「こんな大きなパーティなんて、三枝さんは凄いかたなんですね?びっくりしてます」 遥の口調に合わせる様に、私もまたそう答えて笑みを見せてみた。 「可愛いお嬢さんですなぁ、まぁ、緊張なさらずに、楽しんで行って下さいねお二方とも、あ、一応これ差し上げますね」 そう言って手渡されたのは、以前三枝さんが私にくれた名刺と同じ沢木さんの名刺。 名刺って…この世界の人の挨拶代わりなんだと改めて思えた。
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