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店に帰った私を待って居たのは仲間からの質問攻めだった。
そりゃあ、あんな高級車から私が男性と共に降りてきたら、女子の中じゃひと騒ぎ起きるのは至極当然なんだけど、この頃はまだ、彼の事を良く知らない訳で…聞かれても答えようも無い。
「だから、私は彼にこの店の事教えて、買い物してきただけだよ、彼氏でも無ければ恋人でもないよ本当に」
「でもさ、彼、どこぞのお金持ちの御曹司だよ、絶対!千春に玉の輿のチャーンス!」
「やめてよ、そーゆーの…私は玉の輿なんて要らないし、なりたくもないの!」
「またまたー。何であんたはそう夢がないのよ、一生苦労しないんだからいーじゃん!私なら絶対狙う!」
欲しければ差し上げます!
私にはそんな資格ありませんから。
自分の素性を他の人には打ち明けたりしてない、まさか、元男の子です!なんて口が裂けても言えないし言えるわけ無い。
恋愛だってそう…普通に女の子として生活してきた彼女達と私が同じなら、そんな玉の輿って夢も持ったかも知れないけど…
私の場合は、恋愛なんかよりも、女の子になりたくてなった作り物に過ぎない訳で、恋だの愛だのを語る立場じゃない。
だから、恋愛感情と言っても、その人が素敵で素晴らしい恋愛を遂げるまで片想いで見守るのが精一杯。
あんな切ない気分は出来れば避けたいけど何れまたそんな瞬間が来るかも知れないと思うと、尚更想いを告げる事を躊躇わざるを得ないのが、今の私で。
彼がそんな対象にならなければ良い…そんな風に現時点では考えていた。
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