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「えっと…さっきは半ば無理やりですまない、それはお詫びする、でも、親切にありがとう…千春さんだっけ…」
「はい、そうです。でも、私大したことしてませんから、気にしないで下さい」
意外と言えば意外…私の中じゃけっして頭は下げる筈ないと思っていた…でも、彼はまるで私達庶民の様に頭を下げ、お詫びしてくれる…逆に申し訳ない気持ちになる。
「あ、君の名前だけ知ってるのは不公平だね、俺は三枝光成、肩書きは資産家の御曹司だけど、正直、御曹司と呼ばれるのは不快でね…何か呼びやすい様に呼んでくれ!」
「いえ、そんな風に言われても…お客様を名前でなんて失礼ですから気になさらないで」
「そう?俺は呼んでもらえた方が嬉しいんだけどね…ま、良いや!それと、店の雰囲気、確かに良いよね?また来てもいいかな?」
「あ、お客様なら歓迎ですよー」
私はどっちでもと思ったのに、遥がまたまた余計な事を…しかも、三枝さんは乗り気で頷いてるじゃないのよー。
何だか先行きに不安を覚えるけど…まさかこの人に片思いをするなんて…まだ、この頃は予想もしていなかった。
車が店を後にする。
折角なので見送ると、マスターの神崎誠一郎(かんざきせいいちろう)がポソッと呟いた。
「まさか、あの三枝の人間がウチに来るなんてな…想定外だ」
どうやら、神崎は彼の素性を知っているらしく、驚いた様な嬉しい様な顔をしている私は気になって少し聞いてみた。
「知ってるんですか?マスター」
「有名な投資家だよ、噂じゃ年商数十億とか言われてる家さ…うちら庶民には全く関わる事なんてないと思ったが…まさか、千春が連れて来るとは思わなかったよ…客としては最高の人さ」
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