Plain Song

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累の悪い癖。 作曲がうまくいかないとイライラしてしまうこと。 そして、ストレスが溜まってくるとふっかけられた喧嘩をかわすことなく真っ正面からかってしまうこと。 そんでもって…公園で一人、ベンチに座って傷付いた顔でタバコを吸うんだ。 「私が通らなかったらどうするの?」 「どうもしないだろ、家に帰る」 「手当は?」 「しねぇ、ほっときゃ治るし」 仕上げにテープを貼って、手当は終了。 今日のは外傷はあまりひどくない、口の中は結講切れてしまっているみたいだったけど。 累とは家が隣で、幼稚園から高校まで学校も一緒だった。 だから、隣でずっと見てきたんだ。 初めて曲を作って嬉しそうに聞かせてくれたときの顔も、中学で初めて喧嘩をして泣きそうに唇を噛み締めていた顔も、事務所との契約が決まって目をキラキラさせていた顔も、初めてテレビに出ることになって緊張していた顔も。 全部よく覚えてる。 「もう喧嘩やめなよ、傷になっちゃうし、いつか週刊誌にでも撮られちゃうかもしれないよ」 「別に良いだろ、俺が何か悪いことしたわけじゃないんだし」 「イメージが良くないよ、喧嘩して相手に手あげてるんだから」 累だけの問題じゃなくてバンドの活動にも影響するよ、と言えば、累はむっとしたまま黙っていた。 そう言えば、こうして顔を合わせるのは一ヶ月ぶりくらいだろうか。 前会ったのは累のバンドのライブの時。 打ち上げに呼んでくれて、居酒屋さんで久しぶりに累含め、バンドのみんなと再会した。 バンドメンバーはほとんどが同じ中学、高校だったし、累の家に遊びに行った時に顔を合わせていたからよく知っている。 私は看護学生になり、みんなは大学に通っていたり通っていなかったり、途中でやめたりと色々だけれど、バンドマンとして成功したその顔はキラキラ輝いていた。 まだ一ヶ月しか経っていないけど、懐かしいメンツに互いに指を指し合って笑ったのが何だか結構昔のことのようだ。  
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