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累のこと、好きとか嫌いとかそういう目で見たことがそもそもなかった。
一緒にいるのが当たり前で、私の隣には累がいて、累の隣には私がいて。
しばらく会っていなくても心は通っているような気がして、不安とか、累を誰かにとられるとか、そういうのも感じたことも考えたこともなかった。
好きだと言われれば、私も、累のことは好きだ。
いなきゃ困るし、離れていっちゃったら寂しいし、そんなの考えられないくらいずっと一緒にいたし。
え、でも…そんな……。
「なぁ、もう幼なじみやめて
そういう関係になりたいんだけど」
ソファーから身を乗り出した累にぎゅっと腕を掴まれた。
やばい、心臓が、うるさい。
体全部が心臓になっちゃったんじゃないかってくらいバクバクとおかしいくらいに鼓動を刻んでいる。
目の前にいるのは、確かに累なんだけど、でも…でも…でも……。
(20年もずっと一緒にいたはずなのに…こんな顔、初めて見た…)
何も言えなくて視線を泳がせていたら、累は泣きそうな顔をしてボソリと一言。
「もう、片想いの曲なんて書きたくねぇよ」
そして手を引いて、私のことを大事そうに抱き締めた。
***
『今回の新曲は今までとひと味違うと伺ってますが、具体的にどの辺が違うんでしょう?』
「「色んな意味で一皮剥けた、男の曲っす!」」
『色んな意味で…?』
「おい、お前余計なこと言うなよ!」
〔あっ今回は今までの曲とは違って恋人同士の曲なんです、ラブソングとはまた違うんですけど〕
『今までの曲とは題材が違うんですね!今回もルイさんが作詞作曲されたんですか?』
「あ、はい。一応」
『なぜ今回は新しい題材にチャレンジしようと思われたんでしょう?』
「いや…何て言うか…その」
{もう俺らも20なんで!そろそろ大人になろうかなって!}
(「今まで見せたことない俺らの大人の魅力が詰まってます!」)
〔PVもかっこいいんで見てほしいです〕
『皆さんお忙しいところありがとうございました!
月9の主題歌にもなっている
注目のニューシングルは今週金曜日発売!
来月発売予定のアルバムも要チェックです!』
おわり
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