ー覚醒ー

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「......つまり君は、...」 追及するまでもない。 医学が進歩したとしても人間の妊娠の周期を変化させることは 出来なかった。 わたしがいなかった1年間の空白の期間を、 彼女が別の誰かと埋めた。 彼女の腹にいるのは、自分ではない男のかけらである。 それは明白ではないか。 「GI....お願い聞いて」 彼女はすがるような瞳で私を見つめる。 揺れる瞳を見つめ、居てもたってもいられなくなった。 「....よしてくれ」 BAをおいて、部屋を出た。 悔しさで、心がくじけそうになる。 私は、政府のプロジェクトのために、ここを離れた。 彼女を忘れた日など、片時も、なかったのに。 あんなに愛し合ったというのに...。 時というものは残酷である。 彼女と過ごした日々が、遠い昔に感じられる。 スーツの裾で頬をぬぐった。 水分を含んだスキンスーツの布地が、 濁った色に変わったが、 水電子に反応したウエアが、 分子の分解を起こし始め、 空中へと気化させた。 元通りになった、スーツの袖をみて、 悲しみの感情が薄れてゆく。 ーー時間がない。 ―――― 地球を奪還しなくては。 感傷に浸り続けたかったが、前へと進まねばならない。 プロジェクトを、進めなくては。
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