255人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
INUと入れ替わり、BAがやってきた。
私は彼女の顔をみることができずに背中を向けた。
まだ心は、ウソをつけずにいる。
「勘違いしているでしょう?」
彼女はゆったりとした口調で告げる。
「何がだ?」
ここから見る宇宙の景色が美しいと感じていた。
新しい星が産まれ、死にゆく星の生き様を眺め、BAと感動を分かち合った。
だが今は一人である。
失うものなど何もない。
地球の地を踏みしめ、息絶えるのも、悪くない人生の終わり方だ。
彼女は、私を背中から抱きしめた。
大きく突き出した腹が、背中を押す。
ドクンドクンと息づく強い鼓動を感じる。
---- 胸が苦しい。
「この子は、あなたの子供よ」
「バカを言うな、1年もの間、君とは離れていたんだ
そんなことはあり得ない」
「いいえ、あなたの子供よ。
あなたからの連絡が途絶えたとき、
あなたの....冷凍保存してあった精子を使って受精をしたの。
Islandでは、本人の許可のない使用は違法だけれど...。
どうしても、あなたがいた存在が欲しかったの。
...ごめんなさい。
何の相談もなく一人で決断したことを、謝るわ」
私を抱きしめる腕を掴んだ。
この細い指に触れられる瞬間をどんなに待ち望んだのか。
どれほど彼女を愛しているのか、思い出した。
一瞬でも疑った自分を、情けなく思う。
「私は....てっきり君が、ほかの男と一緒になったのかと」
私は肩を震わせ、涙がこみ上げることを抑えられなかった。
「バカね。
あなた以上の男なんて、この宇宙の中にどこにもいないわ」
そんな私の背中へと頬を寄せるBAへと振り返った。
「....愛してる。
必ず、必ず、戻る。
だからそれまで、私たちの子供を守ってくれ」
私の言葉に、微笑むと、瞼を閉じた。
その唇に触れたとき、宇宙にまた、新しい星が産まれた。
最初のコメントを投稿しよう!