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当然だが人々はパニックに襲われてある人は茫然とし、ある人は泣きわめき、またある人は世界の終りだと騒いだが、事はそれだけに収まらない。
穴は別の世界につながっていたからだ。
生き残った人々の中にはあと数メートル、中にはあと数センチ立ち位置がずれていれば巻き込まれていたという人も多い。
「数えきれないほどの化け物が真っ暗な穴の中から飛び出してきたんです」
「まだショックが抜け切れない状態で、腰を抜かしてたけどたしかに見たんだ。犬のようなものや、鳥のようなもの、人に見えるのもいた。けどどこか皆違っていた」
「鬼が!鬼が出てきて隣にいた妻を食べたんです!」
数々の証言はすぐに真実として人々に受け入れられた。
というより、受け入れざるを得ない状況だった。
世界には、新たな住人たちが、確かに存在し始めていたから。
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