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人類は滅亡する。
あるいは奴隷のような形や餌のような形で支配されるのに違いない。戦争が始まるのだと、様々な憶測や噂が乱れ飛ぶなか、事態は意外な展開を迎える。
穴が開いて十日目。
世界各国の要人の元に<闇皇>と名乗る人物からの使者がやってきたのだ。
「闇皇はこの世界の人間との友好的な共存を望んでいます」
一見普通の人間そのものに見える姿で、その国の言葉を流暢に話す使者はそのように切り出したという。
だが友好的な共存と言われて、あっさりそうですかと受け入れられるはずもない。実際世界中では突然現れた穴によって人口の三分の一が失われ、今なお文明は壊滅的な打撃を受けている。
まして世界中で穴から出てきた化け物によって、こうしている今も人の命は脅かされているではないか。
「穴は我々にとっても、予想外としかいいようがありません。実際、こちらと同じように穴は我々の世界にも突然現れたのです」
これまでも小さい穴が開いたことは何度もあったのだという。
「水たまりのようなものや、大きくてもせいぜい数メートルほどのもので、大抵は小一時間の間になにもなかったかのように消えてなくなります。妖精や悪魔、吸血鬼、鬼などと呼ばれているものはずっと昔からいたでしょう?」
それらはその穴の近くに偶然いたものが抜け出たものだと、使者は言った。
逆に人間が迷いこんできたこともある。
「何より穴による被害は我々の世界も同じく被っています。大勢の死人も出ている。ただ損害はこちらの方が大きいでしょうが。我々の世界はこちらよりも大体100年ほど文明が遅れていますので」
電気やガスなどにあまり頼らない生活をしている分、まだ傷はずっと浅い。
「機械というものが苦手な種族が多いのです。それに力の強い__ああ、これは肉体的なものではなく魔力や妖力とでもいったものですが__者は離れた者の意識に直接話しかけることもできますし、空を飛ぶことも、一瞬である程度の距離を移動できるものもいます。あまり必要もない」
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