51人が本棚に入れています
本棚に追加
その電話は毎日続きました。
最初の時のように、内容は事故や失敗・ちょっとした不幸(同僚のお母さんが亡くなったなど)に発展していきました。
しかし留守電の内容は漠然としており、小説のようにその電話の内容によって事故を未然に防ぐなどという事は出来るわけがありませんでした。
不思議なのは会社が休みの日です。
その電話はだいたい夜12時頃にかかってきているようなのですが、僕が家にいる時はかかってこず、寝て起きると留守電が入っているのです。
しかも時間は昨晩の12時何分、と機械は言います。
確かに僕はその時間は家に居て、それどころか、いつかかってくるかと、待っていたはずなのに・・・。
そして最初の電話から14日目の夜でした。(毎日電話の内容をメモしておいたので正確な日数です)その日は前の晩から体調が悪く、半年ぶりぐらいに会社を休んで家で寝ていました。
すると電話の音が聞こえました。時刻は午後3時くらいでした。
僕は電話を無視しようと思い、ベッドの中で留守電に切り替わるのを待っていました。
すると留守電に切り替わった電話から聞こえてきたのはあの声でした。
僕はベッドから飛び起き、受話器を取り上げ ました。
受話器の向こうからはやはり僕の声が聞こえてきて、最初のメッセージ「今日の朝は最悪だった」という言葉が聞こえてきました。
僕は何も言わず、じっとその声に耳を傾けていました。
声は最初のメッセージから次の日のメッセージ、またその次の日の・・・というように毎日の言葉を繰り返していきましたが、それと比例してスピードがだんだん早くなっていくのです。
10日ぶんぐらいを過ぎた頃からは、元のメッセージを知らないと聞き取れないぐらい早くなっていて…それはだんだん「シュルシュル」というテープを早送りするような音に変わっていました。
背筋がぞくっとしました。
この電話を聞いてはいけない。
そう思いました。
しかしどうしても受話器を放すことが出来ません。
その後5分か10分ぐらい「シュルシュル」という音を聞いていたでしょうか。突然音が鳴りやみ、少しの沈黙の後、今度はハッキリと僕の声で、電話の主は言いました。
【オマエ ハ アシタ シヌゾ】
…当然僕は死にませんでした。
それからはあの電話もかかってきません。
最初のコメントを投稿しよう!