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「リトス。コチョウさんの身体は、クラージュっていう魂だけの存在によって奪われたって言ってたわよね。それが事実なら、きっとコチョウさんは無理やり魂を剥がされたか、喰われたかして肉体を奪われたんだと思うわ。そうでなければ、ここまでの暴走は起こらないはずだから」
皆が悲しみに潰されそうになっているなか、ルインだけは淡々と状況を考察し、話を進めていく。シエラは身体を硬直させたまま、流れてくる冷静な声を聞いていた。
「私はシルエルド族の姿は知らないけど、あの竜の姿がそうだと言うのなら、コチョウさんの魂が完全に消えていると思って間違いないわ。でも……だからと言って、この肉体に別の魂が完全に融合した訳でもないわ」
「…………どういうこと? シエラは魔力が安定してきてるって。それに、あたしも同じように感じた……」
リトスは未だ繋がったままの鎖を見つめ問う。
「貴女たちは、この変化を肉体と魂が完全に融合した結果だと思ったかもしれない。けど、たぶんそうじゃないわ。おそらくこれは、肉体と魂の不和が生じさせた暴走によるものよ」
「不和? 暴走? たしかに、でたらめに暴れてたけど………。だったら、あたしたちが感じた魔力の感覚は勘違いだったってこと?」
「勘違いではないわ。魔力には波があって、一時的に普段以上に強い同調をみせることがあるから。リトスには実感が湧かないかもしれないけど、普段から魔法が身近な人なら何となくの感覚は分かるはずよ」
「……あ」
思い当たることがあり、シエラは声を洩らす。
「これは魔力に限らず、新しい力や技術を得た時にもある現象ね。力を得たばかりの頃は上手く扱えたり、扱えなかったりすることがあるわ。けど、時間が経てば安定して扱えるようになる。これは努力の結果だと言えるけど、器となる肉体と中身となる得たものの波長が重なる間隔が大きくなるからでもあるの。でも、器と中身の形が合わないものは、どんなに鍛えても、どんなに時間が経っても完全に融合することはないの」
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