幼き王子の願い

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「ラファル。何の本を読んでいるんだ?」 「これですか? これは『創世神話』の本ですよ」 「創世神話? ……ああ、レイミリアが世界を創ったっていう話のか」 「はい。そうです。僕、このお話が大好きなんです。母に何度も読み聞かせてもらってました。……だから……」 ラファルの声が小さくなり、消えかけていた影を再び落としてしまう。 「…………」 この国の王妃で、ラファル母であるフリージアは、現在病に臥せり長らく寝たきりの状態だという。 重病なのか、ほぼ隔離の状態で、息子であるラファルでさえ面会が許されていない。 もちろん、王の客人とはいえ、よそ者であるリトスたちが面会できるはずもなかった。 だが、面会が許されずとも、ラファルは毎日のように母の部屋に通っている。今日は会えるかもしれないという、僅かな期待を胸に……。 オランジュからその話を聞いていたリトスは、心のどこかでこの事を気にかけていた。しかし、自分がどうこうできる問題でもなく、声をかけることなどせず、一歩引いた距離から見ているだけだった。
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