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埃舞う広間に舞う四つの影。
それは、人の姿であり、人外の姿でもある。
舞う影たちは轟音や閃光を伴い破壊を繰り返す。
破壊され、崩れゆく広間。
自身を支えきれなくなった天井は、外の白い光と共に床へと落ちていく。
床には部屋の残骸に混じるように、この空間を彩っていたであろう装飾品たちが無残な姿になり散らばっている。
そして、それらを覆うように散る夥しい量の血痕。
僅か数時間前まで城の大広間として人々の声に溢れていたこの場所に、その面影は一切なかった。
しばらくの後、突如訪れる静寂――
破壊し尽くされた空間に、恐ろしいほど緊張した空気が満ちる。
この場に弱い人間が立てば、瞬く間にこの重圧に押し潰されるだろう。それほどまでに重く鋭い空気。
上手に二人、下手に二人。
四人が四人とも戦闘による負傷で疲弊し、深く荒い呼吸をしている。
特に下手にいる二人は相当な深傷らしく、動くことさえできないでいた。
フードを目深に被った赤毛の男はすでに戦意喪失しているのか、水晶のような剣身を持つ剣を床に突き刺し、地に膝をつき身体の支えとしている。
一方、漆黒の髪を長く伸ばす若い男は傍らで膝をつく男よりも傷が深いのか、荒い呼吸のなか深く咳き込み、汚れた床に赤い滴を落としていた。
だが、彼の瞳は誰よりも憎悪に満ち、闇を孕んだような暗く黒い瞳だった。
その瞳は対峙する二人の男を鋭く睨みつけている。
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