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しかし、上手に立つ二人はその瞳に全く臆する様子はなかった。
血のように赤い瞳をした黒髪の男と、白銀の髪に金の瞳を持つ老人は、向けられる敵意に対し反撃をする力を未だ残しているようだ。
赤い瞳の男は少し悲しげで、憐れみも見える表情で、膝をつく若い男を見下ろしている。
「……これで、よいのじゃな」
老人が何かを促すように問いかける。
赤い瞳の男は何も言わず静かに瞼を閉じた。
それを返事と受けとり、老人はゆっくりと右手を憎悪に囚われた若い男にかざす。
老人の枯れた右手が淡い銀色の光を放つ。
直後、場の空気が変わり、その光に呼応するように若い男の周囲にも銀色の光が漂い始める。
自分を包む銀色の光を目にし、黒髪の若い男は不敵に口角を上げた。
「――くくくっ」
低く暗い笑い声が響く。
「なにが、可笑しい」
笑みを見せる若い男に、上手の二人は一瞬だけ焦りの色を見せた。
だが、この戦いの結末が見えている余裕か、二人はすぐに冷静を取り戻す。
しかし、この局面になり笑い続ける黒髪の若い男に、何とも言い難い不気味さも感じていた。
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